魯迅と並ぶ中国人気作家 郁達夫の研究書出版

甲南大・胡教授 郁達夫の研究書出版

『郁達夫研究』表紙 中国の近代文学を代表する魯迅(ろじん)と並ぶ作家として現代中国で人気が出ている郁達夫(いくたっぷ=1986-1945年)の研究書が、甲南大学の胡金定(こ・きんてい)教授(47)によって著された。

胡さんは、1956年、中国福建省生まれ。厦門(あもい)大学卒業後、同大学の専任講師(日本語、日本文学担当)を経て、85年に来日。著書に「森村誠一悪魔の飽食』中国語訳」などがある。

郁は魯迅と同時代に日本に留学し、魯迅を人生の師として仰ぎ、文学的な交流があった。その小説は力強い主観、感傷的、叙情的な詩風、軽妙な筆致を併せ持ち、近代中国の小説に大きな影響を及ぼした。
中国文学の評論家、竹内好は郁を「広さにおいて魯迅に劣り、深さにおいて優る。この人を除いて新文学はない」と高く評価した。

本書は「郁達夫の小説の特徴」など8章構成。胡さんは、郁が大正時代に日本に留学して志賀直哉佐藤春夫葛西善蔵の私小説に大きく影響を受けたことや、郁が日本留学中の経験をそのまま題材にしたデビュー作「沈淪(ちんりん)」をはじめ、郁の全集を読んだ自身の青年期の感想などを紹介している。

さらに郁を「中国現代文学史上において独特の創作方法を持ち、小説や散文、古典詩などの分野で大きな成果を挙げた」とし、「創作方法は近代中国小説に大きな影響を及ぼした。日本でも多くの人に読んでもらいたい」としている。

大阪日日新聞・2003年8月16日

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